第4回「家電メーカーブランド力調査」
[調査の概要]
調査の目的:家電メーカのブランド力の測定
調査日程:06/10/17〜06/10/24
調査人数:1453人
質問項目:
1. 格好良いと思うブランドはどこですか?(複数選択)
2. (製品の良さという点で)
信頼できるブランドはどこですか?(複数選択)
各質問のねらい:
1. 官能ブランド力の測定
2.
機能ブランド力の測定
調査対象:
1. 松下、ナショナル、パナソニック
2. ソニー
3. 日立
4. 東芝
5.
三菱
6. シャープ
7. サンヨー
[結果の概要]
格好良いと思うブランドはどこですか?
1位 ソニー (768)2位 松下、ナショナル、パナソニック (668)
3位 シャープ (487)
(括弧内は得票数)
(製品の良さという点で) 信頼できるブランドはどこですか?
1位 松下、ナショナル、パナソニック (928)2位 シャープ (459)
3位 東芝 (395)
(括弧内は得票数)
今回の調査について
■ 機能ブランド・官能ブランドとは?
ブランドは、消費者が一般的な最終消費者であることを背景に存在し、その購買に影響を与えるものです。
ブランドがブランドたり得るゆえんは、
1. 消費者は専門家ではない、
2. 消費者は人間という社会的な存在である、
という2点に集約されます。
専門家ではないからこそ、「信頼できそう」という気持ちが商品の購入意志決定に影響を与えるのであり、人間であるからこそ絵画のような存在に価値を認めるのです。専門家でないことから生じる評価不安を減少させるブランドが機能ブランドであり、芸術的な価値の要求を満たしうるブランドが官能ブランドです。一般的にいうブランドは、この機能ブランドと官能ブランドをその構成要素とするものとなります。
より詳しくは、こちらをご覧下さい。
→機能ブランド・官能ブランドという考え方
■ ブランドに対する消費者の信頼や憧れを測定
今回の測定では、売上数・売上高や超過利益率などとの関係ではなく、ブランドの基礎である憧れや信頼の感情を測定したものであり、この意味において測定値は潜在的なブランド価値となります。憧れや信頼の感情が商品の購入に影響を及ぼす(及ぼした)程度を基礎として測定されたしたものが顕在的なブランド価値であり、これにはインターブランド社のブランドランキング などがあります。
信頼できる・格好良いと思われている→ブランド力がある よく売れている・超過利益を得ている→ブランド力がある |
■ 機能ブランド力と官能ブランド力
今回の調査で、「格好良いと思うブランドはどこですか?」という質問に対する得票が官能ブランド力を示し、「(製品の良さという点で) 信頼できるブランドはどこですか?」という質問に対する得票が機能ブランド力を示します。ソニーは機能ブランドよりも官能ブランド力が強いブランドであり、松下は官能ブランドよりも機能ブランド力が強いブランドとなります。
官能ブランドの要素が強いメーカーは趣味性の強い商品で優位に競争を進めることができ、また、機能ブランドの要素が強いメーカーは商品の評価不安の強い商品で優位に競争を進めることができるという違いがあります。そのため、機能ブランド力と官能ブランド力は異なるものとして測定される必要があるといえます。
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ブランドと購買の関係
ブランド力があることが、直ちに売上や利益につながるわけではありません。機能ブランドとは品質証明書のようなものであり、官能ブランドとはブランドの格好良さです。いくら格好良くとも商品の信頼性が不足している場合もあり、また、評価に不安のない商品では品質保証書はあまり意味がありません。さらに、革新的な商品の場合は通常ブランドは意味をなしません。ブランド力があるにも関わらず業績が優れない場合は商品の開発力に問題を抱えている、または、もう一方のブランド力が不足している、ということになります。
なお、機能ブランド力は商品の信頼性を心理的に保証するものであるため、そのブランド力は商品の分野によって異なります。今回の調査を、たとえば、掃除機に限った信頼性で測定しようとすると、結果は異なるはずです。今回は商品を限定せず、総合的な信頼性を測定対象としました。
【参考 : 地域によるブランド力の差異】 「世界シェア、シャープ苦戦」 (朝日新聞、2006年、8月22日、抜粋) |
商品のライフサイクルとブランド力の関係
評価不安が強い商品なのか趣味性の強い商品なのかによってもブランドの影響の仕方は異なるものですが、同じ商品であってもその時期によって、ブランドが与える影響の程度は異なります。
高度な技術を要する商品はその評価が困難であるため、機能ブランドが選択に強く影響を与えることになります。そのために、高価格で販売することができ、また、官能ブランドが機能する余地は小さいことになります。このような商品も市場に投入されてから年数を経ることにより消費者の評価不安は減少していきます。それに伴い、趣味性のある商品の場合は官能ブランドが選択に影響を与えるようになり、趣味性のない商品においては販売価格が低下していくことになるのです。さらに年数を経ると革新的な商品が市場に登場し、機能ブランドも官能ブランドも有効に機能しなくなります。
ブランドの影響程度と商品のライフサイクルの関係は次のように分けることができます。
[誕生期→初期成長期→後期成長期→成熟期]
ブランドと購入・販売の関係が変化するのは、商品の評価不安の程度が固定的でないことに起因する。商品が市場に投入されてからの年数を経るにつれて消費者の商品に対する警戒心が解けていき、それに伴い選択にかかる消費者の不安が減少していく。機能ブランドの作用は評価不安の多寡に応じ、また、官能ブランドの作用も品質不安によって限定を受けるため、ブランドと購入・販売の関係は商品が市場に投入されてからの経過年数によって変化することになる。 |
(1) 誕生期
サイクロン方式の掃除機におけるダイソンのように、革新的な商品や機能に対しては、従前のブランド力は機能しない。
【参考 : 革新的商品とブランド力】 シャープは業界初となるカメラ付き携帯電話を2000年に市場に投入したことにより、2001年においては7.4%であった低シェアを13.4%にまで増加させた。その対前年成長率は74.9%である。 これは、商品がブランドを超越するものであることを示しているといえる。
【参考 : カメラ付き端末の発売により勢力図を塗り替えたシャープ】 >カメラ付き端末は2002年に急速に販売を伸ばした。総販売数に占める割合は、第1四半期は15.7%だったが第4四半期では57.3%に達し、通年では36.4%となった。 >カメラ付きの中で大きなシェアを獲得したのがシャープだ。シェア36.2%で1位。年間で519万5800台を販売した。ただしガートナーは「カメラ付き端末を提供するベンダーが増加するにつれ、圧倒的な優位性は次第に失われつつある」としている。 |
(2) 初期成長期
製品の信頼性に関する機能ブランド力が有効に機能する。後期成熟期に向かうにつれて、機能ブランドの影響力が弱まっていき、趣味性の強い商品では官能ブランド力が影響を与え始め、趣味性の少ない商品では価格の低下が始まる。
(3) 後期成長期ならびに成熟期
品質など商品の機能遂行に関する不安が減少する後期成長期ならびに成熟期においては、趣味性が重視されることによって官能ブランドが影響力をもつようになり、不安も趣味性も少ない商品は価格の下落を受けることになる。
【参考 : 不安の減少による商品機能以外への興味】 「ピンクでアピール 〜
モテるデジカメ=『機能+カワイさ』」 (朝日新聞、2006年10月25日、抜粋)
【参考 : 不安の減少による官能ブランド力の重視】 「薄型テレビ 高級感演出、電機各社
米にアンテナショップ」 (朝日新聞、2006年10月19日、抜粋)
【参考 : 不安の減少によるブランド力の乏しい企業の参入】 「薄型TV本格参入
勝算は?」
【参考 : 新たな循環へ、革新的商品の誕生】 「いま、白物家電が面白い」 (朝日新聞、2006年8月19日、抜粋) |
概観
■ 松下、ナショナル、パナソニック
信頼で1位、格好良さで2位と、良い結果でした。ソニーを嫌いという人は多いかもしれませんが、松下を嫌いという人はそう多くはないと思われます。そこに、松下には超えられない壁があるのかもしれません。
■ ソニー
経営が迷走しているようにも思われるソニーですが、官能ブランド力では一位を獲得。ハリスインタラクティブの調査でも7年連続で、ベストブランドに選出されています。
【参考 : CM】 エルエル:ソニーの液晶テレビのCM>ソニーの液晶テレビ「BRAVIA」のCMっす。
【参考 : 最近のニュース】 「ソニー大幅減益
来期回復も不透明」 (朝日新聞、2006年10月20日、抜粋)
【参考 : ウォークマンの歴史】 >WALKMANの名前とともに音楽が人と一緒に歩き出して、27年になりました。 |
■ シャープ
液晶という技術のイメージから、液晶テレビ・アクオスの抽象的なイメージに昇華させることに成功しました。液晶技術の強みからまず機能ブランド力を獲得し、液晶テレビで確固たる地位を得、次いで、アクオスのデザインやCMから官能ブランド力を獲得したといえます。また、アクオスブランドの拡張もうまくいっているようです。
【参考】 「携帯、シャープが首位」 (朝日新聞、2006年10月20日、抜粋) |
■ 総合電機系3社
総合電機3社(日立、東芝、三菱)の特徴は、格好良さはないが最低限の信頼があることです。東芝と日立と比べると、三菱の不人気が目立ちます。総合電機3社のブランドは、趣味性が少ない白物家電で力を発揮できるでしょう。
■ サンヨー
サンヨーのブランド力は極めて乏しいという結果に。キヤノンはプリンタ、デジカメという一連の技術からブランドを獲得したのと対照的に、サンヨーはデジカメの技術力をブランドにつなげられなかったようです。技術開発においても、その方向性の選択が欠かせません。サンヨーには電池技術や太陽光発電技術など優れた技術がありますので、これらの技術をどうのようにブランドの構築に生かすかが課題となるでしょう。
【参考 : ブランドとは何か】 「三洋TV提携
ブランド存続狙う」 (朝日新聞、2006年3月18日、抜粋) |
[調査データ]
(2006/10/28)
【参考】
ハリスインタラクティブ社の“ベストブランド”調査
日本語訳は不完全な意訳であり、抜粋です。
詳しくはこちらの原文をご覧下さい→ The Harris Poll® #39, July 23,
2003
なお、下の調査は2003年度版のものですが、2006年度版も公表されています。
2006年度版はこちら→ The Harris Poll® #55, July 12, 2006
一年に一度行われるハリスインタラクティブ社の“ベストブランド”投票で、ソニーが4年連続の一位を獲得した。今年の調査では、クラフトは4位から2位に順位を上げ、一方、デルは2位から3位に順位を落とした。GMは10位から4位へと躍進し、マイクロソフトは5位に順位を上げた。
今年の調査では、トップテンのうちの4ブランドがハイテクまたはエレクトロニクス産業であった(前年度は3ブランド、2001年度は5ブランド)。これは、マイクロソフト社の反トラスト訴訟の収束を反映したものと考えられ、そのマイクロソフトは今年最高の順位を記録した。トップテンのうち4ブランドが消費者・包装品ブランド(consumer and packaged goods brand)であった。
(*表は割愛)
この調査は、企業の評判とブランドイメージとの関連を強く示すものとなった。回答された全てのブランドが企業名ブランドであり、その様な回答をした人のうち65%〜89%が企業の評判はベストブランドを選定する上で非常に重要であると答えた。
“We would like you to think about brands or names of products and services you know. Considering everything, which three brands do you consider the best?” 「あなたの知っている製品やサービスについて伺います。様々な点を勘案し、最良だと思うブランドを三つ挙げてください」
(*表は割愛)
注:任意回答である。ブランド名を記載したリストは提示していない。
表 2: トップブランド選定における企業の評判の重要性 “When you think about why ( BRAND MENTIONED AS TOP BRAND ) is a top
brand, how important is the reputation of the company and what you know
about the company that makes that product and that
service?”
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